合意書とは何か?覚書や同意書、誓約書等との違いや法的効果について解説
法務関連のお仕事をされていて、合意書を締結した経験のある方は多いと思います。しかし、合意書とは覚書や契約書といった文書や同意書などとはどう違うのかといった疑問があるのではないでしょうか。そこで本記事では合意書とはどのような文書で覚書や契約書、同意書などとはどのように違うのか、どのような法的効果を生じるのかといった点について解説します。
関連記事はこちら
合意書とは
そもそも合意書とはどのような文書なのでしょうか。ここでは合意書とはどのような文書なのか、またどのような場面で用いられるのかについて解説します。
合意書とは
合意書とは、当事者間で何らかの合意をした場合に締結する書面のことをいいます。合意書を締結するのは当事者間の法律関係を明確にし、事後的な紛争を避けることを目的に行なわれます。
合意書を用いる事例
合意書を用いる場面としては以下の様な場面が考えられます。
①M&Aの際の交渉段階
M&Aの交渉段階では、想定される譲渡価格や条件等について、売り手・買い手の間で条件がまとまると、基本合意書と呼ばれる文書を締結します。基本合意書の段階で詳細な条件を定めておくことで、最終契約に向けてスムーズに進むことができます。
②取引条件について合意できた段階
主に継続的取引において取引条件について合意できた際に合意書を締結する場合があります。基本契約書を締結する前に合意書を締結しておくことで、基本合意書をスムーズに締結することができます。
③隣地間の境界が確定した場合
隣地間でどこが境界になっているのか紛争になるケースは少なくありません。こうした場合、当事者間で境界の位置が確定した際には後に再び境界について争いが生じないようにするために、境界確定に関する合意書を締結し、その中で境界の位置を確定します。
④離婚する際
離婚する際に合意書は必ずしも必要ではありませんが、養育費や親権、財産分与などいくつか取り決めるべきことがらがあることから、こうした事項について離婚合意書を締結し定めておくケースは少なくありません。事後的にこれらの事項について争いにならないように合意書を締結し、明確化しておくのです。
合意書の法的効果
ではこのような合意書にはどのような法的効果を有するのでしょうか。ここでは合意書の法的効果や無効とされる場合について解説します。
合意書の法的効果
M&Aの基本合意書で見られるように一定の条項について明示的に法的拘束力を認めないといった定めがある場合を除き、合意書は、締結した当事者を法的に拘束します。そのため、訴訟になった際も重要な証拠となりますし、当事者は合意書の内容を遵守する義務を負い、違反があれば債務不履行責任等を負うことになります。
合意書が無効とされる場合
合意書の内容が公序良俗(民法第90条)に違反する場合には、合意書は無効とされる可能性があります。
公序良俗とは「社会道徳や社会秩序」といった意味であり、こうしたものに違反することを公序良俗に違反するといいます。具体的には、人権侵害を内容とする合意や犯罪行為を行なうことを合意する内容などが公序良俗に違反して無効となる可能性が高いといえるでしょう。ただし、最終的に公序良俗に反するかどうかの判断は裁判所が行います。
合意書と覚書・契約書・同意書との違い
では合意書と覚書、契約書や同意書とはどのように違うのでしょうか。ここではそれらの文書との違いについて解説します。
覚書や契約書との違い
覚書や契約書は当事者間を法的に拘束する内容の文書であることからいずれも同じ効果を有するものです。
同意書との違い
合意書は、複数の当事者の合意内容を示す文書であるのに対し、同意書は当事者の一方が他方に特定の行為や法的効果を生じさせることについて同意する文書です。そのため、法的な効果や効果を生じさせる当事者の数といった点が異なると言えるでしょう。
誓約書との違い
誓約書も当事者の一方があることをしないこと等を誓約するために他方の当事者に提出するものであり、一方当事者が提出するという点で同意書に類似しています。そんな誓約書は一方当事者が義務を負う内容の文書である事から、当事者双方が法的に拘束され義務を負う合意書とは両当事者が義務を負うか否かといった点で異なります。
合意書作成の際の注意点
では、合意書を作成する際にはどういった点に注意すべきでしょうか。ここでは合意書作成の際の注意点について解説します。
何についての合意書なのか明確になるようにする
合意書というタイトルは、合意内容が民法上の典型契約等でカバーできない場合に付けられるケースが少なくありません。そういった場合にタイトルが合意書となるのはやむ得ない部分がありますが、できるだけ合意書の内容を特定し、何についての合意書なのかタイトル付けを明確にするといった対応を行なうことも検討してみましょう。
既存の契約書名でタイトル付けができないか検討する
先ほどの内容と少し重複しますが、合意書というタイトルは両当事者の合意書面であれば、全て合意書というタイトルにすることが可能です。しかし、単に合意書というタイトルでは、後から見たとき何に関する文書なのか分りにくいというデメリットがあります。
合意書というタイトルはあまり安易に使わず、可能な限り既存の契約書名でカバーできないか検討してみましょう。
合意内容が正しく記載されているか確認する
合意書はタイトルは違えど契約書と同じです。そのため、合意書には合意内容が正しく記載されている必要があります。決めておくべきルールが定められていないと後からトラブルや紛争になってしまう可能性があるため、定めるべき事項については必ず定めておき、抜け漏れがないかしっかりと確認しておきましょう。
収入印紙の要否を確認する
合意書を紙で締結する場合、内容によっては収入印紙の貼り付けが必要となる場合があります。収入印紙の貼り付けが必要になる文書は国税庁のHPで一覧が公開されていますので、一覧の内容に当たる文書となっていないか確認してみましょう。なお、収入印紙を貼り付けるのを失念していた場合、税務調査で発覚すると本来貼り付けが必要な額の3倍の金額を貼り付ける必要があります。高額の収入印紙の貼り付けを忘れてしまうと大きなリスクとなりますので、十分注意しましょう。
まとめ
合意書は名前こそ違いますが、その実質は契約書と何ら違いはありません。そのため、作成に当たってはどのような内容の合意書なのか予測可能性が立つようにタイトル付けを考え、内容も契約書同様に盛り込むべき事項を盛り込んで事後的なトラブルが生じないようにしておく必要があります。
合意書を作成する際には本記事を参考に注意すべき点等に注意しつつ適切な内容の合意書を作成するようにしましょう。