基本契約と個別契約の違いとは?それぞれの役割と定めるべき事項についてご紹介!
取引先との契約には適切な契約書の締結が必要です。しかし、基本契約と個別契約の違いについて正しく理解できていないという方も多いのではないでしょうか。そこで、本記事では、基本契約と個別契約の違いや契約書を作成すべき理由、定めるべき事項についてわかりやすく解説します。
また、契約方法を電子契約にすることで契約書の締結を簡素化することができ、基本契約、個別契約の管理も楽にすることができます。こちらで解説しておりますので、よろしければご覧ください。
基本契約と個別契約の違い
まず、基本契約と個別契約の違いについて詳しく解説していきます。それぞれについて詳しくみていきましょう。
基本契約とは
基本契約は、一定の取引先と繰り返し取引を行う際、すべての取引に適用される基本的な事項を定めた契約です。売買契約、下請契約、業務委託契約など、多くのビジネスシーンで利用されています。
この契約は、「売買取引基本契約書」、「継続的商品売買契約書」などさまざまな名前で呼ばれますが、内容は継続的な取引の共通事項を定めることに変わりはありません。
特に、同じ企業間で継続して商品の売買が実施される場合、毎回個別の契約書を作成すると手間がかかるため、雛形や基本契約書が有効となります。これにより、支払い時期や方法、商品の引渡し方法など、基本的な事項が事前に合意され、個別の取引ごとに簡略化された契約書で対応できます。
個別契約とは
個別契約とは、特定の商品の発注や業務委託の発注に対し、承諾の意思表示があった時点で成立する契約です。たとえば、支払い条件を基本契約で定めておくことにより、個々の発注時に支払い条件について再度話し合う必要がなくなります。
個別契約では品目、数量、納品時期など、各案件の具体的な詳細のみを取り決めれば十分です。契約を締結する際には、まず基本契約書で取引の基本的な内容について合意し、署名捺印します。
これにより契約が開始されますが、実際の取引がはじまるのは、個別契約で各案件の詳細について合意し、締結した後になります。
取引の際に基本契約書を作成すべき理由
次に、取引の際に基本契約書を作成すべき理由について解説します。
- 取引内容を明確にするため
- 取引を円滑にするため
それぞれについて詳しくみていきましょう。
取引内容を明確にするため
基本契約書で細かく基本的な共通事項をまとめ、個別契約書で依頼における具体的な発注内容や必要事項を記載すると、取引の詳細が明確になります。
もし、優先条項が不明確で矛盾する内容が多いと、取引の内容が曖昧になりかねません。基本契約書を適切に作成すれば、双方が明文化された共通認識を持つことが可能になります。
取引を円滑にするため
契約書は継続的な取引がはじまる前に準備する必要があり、はじめは手間がかかるように思えるかもしれません。しかし、毎回新たに契約書を作成する手間と比較すると、はるかに効率的です。
ビジネス上の取引では、迅速な対応が重要であるため、個々の取引ごとに時間を費やすことは、収益機会の損失につながります。したがって、基本契約書で取引内容をあらかじめ定めておくことが、取引を円滑に進めるために重要です。
基本契約と個別契約の優先順位
次に、基本契約と個別契約の優先順位について解説します。
- 優先条項がある場合
- 優先条項がない場合
それぞれについて詳しくみていきましょう。
優先条項がある場合
基本契約書と個別契約書の内容に矛盾が生じる場合、契約書内に設けられた優先条項が重要な役割を果たします。優先条項は、契約内容に矛盾が生じた際にどちらの契約が優先されるか明示するものです。
たとえば、契約書に「基本契約書と内容に矛盾・抵触が生じた場合には、個別契約書の内容を優先する」と明記されている場合、その指示に従い個別契約の内容が優先されます。
優先条項がない場合
優先条項がない場合、個別契約の方が最新の意向を反映しているため、個別契約を優先するのが一般的です。しかしながら、具体的な状況に応じて当事者間でどちらが優先されるべきか判断するのが賢明です。
これは、解釈の違いによるトラブルを避けるために欠かせない対応であるといえます。契約を締結する際には、このような対応を避けるためにも、優先条項を明記するようにしてください。
優先条項を設ける場合の優先順位
次に、優先条項を設けた場合、基本契約と個別契約のどちらを優先させるべきか、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
- 基本契約を優先させる場合
- 個別契約を優先させる場合
それぞれについて詳しくみていきましょう。
基本契約を優先させる場合
基本契約を優先させる場合、取引全体に対する法的統制を確立するというメリットがあります。優先条項を通じて基本契約を優先すると明記しておけば、個別契約書の内容が現場で決定されても、将来的なトラブルを防止できる可能性が高まります。
しかし、個別契約書で基本契約書と異なる内容を合意する際には、より複雑な手続きが必要になる点がデメリットです。そのため、基本契約書を策定する際には、その内容を慎重に吟味し、将来の適用状況の考慮が重要です。
個別契約を優先させる場合
個別契約を優先させる場合、現場の状況に柔軟に対応できるメリットがあります。このアプローチは、「基本契約で取引の基本的な枠組みを設定し、必要に応じて個別契約で調整する」という考え方に基づいています。
基本契約の内容を無条件に優先する場合、実際の取引のニーズを見落とす可能性が少なくありません。しかし、個別契約を優先する場合、契約関係のガバナンスが弱くなるというデメリットも存在します。
具体的には、十分な審査を経ずに個別契約が締結されると、慎重に準備された基本契約の価値が薄れてしまうおそれがあるのです。したがって、個別契約を優先する際には、そのバランスを慎重に考慮する必要があります。
基本契約と個別契約で定めるべき事項
次に、基本契約と個別契約で定めるべき事項について解説します。
- 基本契約で定めるべき事項
- 個別契約で定めるべき事項
それぞれについて詳しくみていきましょう。
基本契約で定めるべき事項
基本契約書では、取引に関わるすべての個別契約に共通する基本的な事項を定めることが重要です。定めるべき事項には、以下のような項目があります。
- 契約の目的
- 個別契約・基本契約間の関係
- 適用範囲
- 代金
- 検査
- 納品や引渡しの方法
- 危険負担
- 契約不適合時の責任
- 製造物責任
- 知的財産権の取り扱い
- 第三者の権利侵害
また、秘密保持、契約解除の条件、損害賠償、不可抗力に関する条項、反社会的勢力の排除、契約の存続期間、合意管轄や準拠法など、契約の一般的な内容も規定します。
基本契約が個別契約に適用される範囲を明示し、個別契約で定める事項は「別途個別契約で定める」とするのが一般的です。
個別契約で定めるべき事項
個別契約では、基本契約で規定されていない、取引ごとに必要な詳細を定めます。これには、取引の具体的な数量や価格、特定の取引に固有の禁止事項などが含まれます。
また、個別契約には、それが基本契約に基づいたものであることの明確な記載が必要です。具体的には、「YYYY年MM月DD日付で締結された基本契約に基づく」といった記載を設けるようにしてください。
売買に関する個別契約書では、商品の詳細、数量、価格、引渡しの時期や方法、支払時期や方法などを具体的に定めます。実務上、継続的な取引では、買主からの注文書による発注と、売主からの納品をもって契約成立とみなされる場合があります。
しかし、注文を確実にするためには、売主に注文請書の発行を依頼し、「受注」を約束する文言を含めることが望ましいです。
契約締結を効率化する方法
基本契約と個別契約の締結を効率化するには、これらを一元的に管理するアプローチが重要です。最近では、契約書の電子化を電子的に締結・保管する企業も増えてきています。
このようなサービスを利用することで、オンライン上での契約締結が可能になり、プロセスの迅速化や作業負担の軽減が可能です。さらに、郵送費や印紙税の削減など、コスト面でもメリットがあります。
リーガレッジで契約書作成を簡単に
この記事では、基本契約と個別契約の違いや基本契約書を作成すべき理由、基本契約と個別契約の優先順位などについて解説しました。
ビジネス上の取引では、取引を円滑に進めるためにも契約書の作成が欠かせません。しかし、契約書を作成する際は、基本契約と個別契約の違いを正しく理解しておかなければなりません。
また、これらの優先順位を明確にするためにも、優先条項を適切に設けることが大切です。さらに、これら契約書の締結を簡素化するためには、契約書の電子化がおすすめです。法務DXツール「リーガレッジ」を導入すれば、ドラック&ドロップで簡単に契約書を電子化することができます。
この記事を参考に、効率的な契約書の作成を目指してみてください。