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契約書における一般条項の意義とは?各条項の意義について解説

契約書にはどの契約書にも共通して定められる条項、いわゆる一般条項があります。一般条項は定型的な条項のため、ついつい軽く流して読むようになりがちですが、取引の内容や契約内容との関係で重要な意味をもつ条項となる場合があります。そこで、本記事では一般条項についてその意義や重要性について解説します。

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目次

一般条項とは

そもそも一般条項とはどのような条項なのでしょうか。ここでは一般条項の定義等について解説します。

一般条項の定義

一般条項とは、売買契約や請負契約といった契約の種類に関わらず、一般的に契約書に定められる条項のことをいいます。一般条項は契約書の後半に雑則や一般条項といったタイトルで定められることが多く、まとめて規定されていることが少なくありません。
一般的な条項だからと言って内容をよく確認しておかないで契約を締結してしまうと、思わぬリスクを負担することになってしまいかねません。
一般条項だからといっておざなりにしないで、しっかりとその取引との関係での意味を検討しておくことが重要となります。

一般条項の内容と意義

では、一般条項にはどのような内容の条項があるのでしょうか。ここでは、一般条項の内容と意義について解説します。

契約の目的

契約書の前文や第1条などに契約の目的を記載するのが一般的です。この目的規定は原則として何らかの義務や権利を課すものではなく、契約の解釈の指針や契約書作成の当事者の背景などを明らかにするためにために定められるのが一般的です。
そのため目的条項に記載されていることをもって、直ちに特定の義務が発生したりするということは原則として考えにくく、契約の解釈に当たって参照するにとどまるものとなります。

契約期間

契約期間または契約の有効期間に関する条項も一般的には定められます。契約には契約期間の定めのない契約(無期契約)と一定期間の定めのある契約(有期契約)に分類されます。そして有期契約は当事者間で別段の合意がない限り有効期間の満了をもって契約が終了するものと、当事者が別段の意思表示をしなければ自動的に更新され契約が継続する自動更新が行われる契約に分類することができます。
自動更新の契約は、長期的に継続する契約でいちいち更新の手間を省くことができるため実務的な負担を軽減することができますが、不用意に契約を長期化させてしまうおそれがあるため、注意が必要です。

契約解除(中途解除)

契約の期間満了以外にも契約の終了事由として契約の解除や中途解約に関する条項を定めるのも一般的です。
契約の解除を定める条項は、一般的には相手方の債務不履行などを条件として、
一方当事者の催告後、相当期間が経過した後又はその事由が解消しない場合には契約の解除ができる旨を定めるのが一般的です。債務不履行の態様によってはその後の解消が期待できない場合もあるため、その場合には無催告解除できる旨を定めるケースもあります。
他方で、契約の中途解約については、当事者の一方からの通知や申し出があった日から一定期間を経過することで契約が終了する旨を定めるのが一般的です。
中途解約を定めることは契約から当事者が自由に離脱できるというメリットがある反面、契約がいつでも終了する可能性があるため、契約が不安定になるというリスクがある点には留意が必要となります。

秘密保持

取引の中で公表や第三者への開示が望ましくない情報のやり取りがなされるケースは少なくありません。また契約の内容についても他の取引先への開示が望ましくないケースも考えられます。こうした場合に契約内容や秘密情報について秘密保持義務を定め、第三者への情報の開示や取引の目的以外に禁止する条項を定めるのが一般的です。

反社会的勢力排除(暴排)

反社会的勢力排除条項とは契約当事者が直接・間接を問わず反社会的勢力とつながりがないことを表明・保証し、これに違反した場合には契約の無催告解除等を定める条項です。
暴力団排除条項は2007年に制定された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」において契約書に定めることが推奨されており、地方自治体レベルでは暴力団排除条例でも努力義務として暴排条項を置くことが努力義務として置かれています。
そのため、多くの契約書では暴排条項が一般条項として置かれることとなっているのです。
逆に言うと、2007年以前に締結された契約書では暴排条項が置かれていない場合が多く見られます。こうしたケースでは覚書で暴排条項を追加する形で契約書を修正するか、反社会的勢力排除に関する覚書を締結し、互いに反社会的勢力とつながりがないことを表明・保証し、違反した場合には当事者間の契約無催告で解除できるといった旨を定めておくことが重要となるでしょう。

損害賠償

損害賠償条項は契約の条項に違反した場合に、その違反によって生じた損害の賠償を請求できる旨を定める条項です。損害賠償の定めを置く場合には損害賠償額の予定を定めるかどうかについても検討しておきましょう。というのも、損害賠償請求を実際に行う際には損害の発生の事実や損害額については請求を行う側が立証する責任を負います。この立証の負担は実務的には決して軽いものではないため、こうした立証責任の負担を軽減するために損害賠償額をあらかじめ決めておくといった対応が考えられます。

契約変更

契約変更に関する条項は、契約の変更についての方法や契約の変更が認められる場合について定めた条項です。一般的には当事者間で文書で合意した場合に契約変更が認められると定めるのが一般的です。

通知条項

契約や取引に重大な影響を与える事由が生じた場合に、対応するために相手方に通知する義務を定めたのが、この通知条項です。例えば、合併や会社分割を行う場合や経営主体が変更する場合などに通知義務を課すことが考えられます。

不可抗力

不可抗力条項は天災や自然災害、戦争やストライキなど当事者のコントロールできない事由によって契約上の義務の履行が困難となった場合の取扱いについて定めるものです。
一般的には不可抗力により当事者の義務の履行が困難となった場合には債務不履行を構成しないとするのが一般的な不可抗力条項の定めといえるでしょう。

譲渡禁止

契約上の地位の譲渡を禁止するのが譲渡禁止条項です。こうした条項がないと当事者が変わってしまい誰に対して契約上の義務を履行すればよいのか分からなくなってしまうからです。そのため、契約上の地位を移転するにあたっては一般的には相手方の事前の書面による承諾を必要とする旨が定められています。

一般条項を欠く契約書のリスク

では、こうした一般条項を欠く契約書を作成してしまった場合どのようなリスクが考えられるでしょうか。
まず最初に考えられるのが反社条項が無い場合に、反社会的勢力と関係する取引先と取引を行ってしまった場合のリスクです。
この場合、不当な要求をされたり、従業員の生命や身体に危険が生じる可能性があるなど様々なリスクがありますが、反社会的勢力と関係をもってしまったという事実によるレピュテーションリスクも決して無視できるものではありません。
こうしたリスクは反社条項があったとしても生じうるリスクですが、反社条項があれば解除することで直ちに関係を遮断できるため、生じるリスクを最低限に抑えることが可能となります。
また、不可抗力条項が無かった場合には、天災や自然災害などによって納期に納品が困難となった場合でも債務不履行責任を負うといった結果になりかねず万が一の際のリスクヘッジが契約書によって適切になされていないということになってしまいます。
このように一般条項を欠く契約書には様々なリスクがあり、無視できないものも少なくありません。一般条項だからと言って契約書審査の際に読み飛ばしたりすると、思わぬリスクを引き受けてしまうことになりかねないのです。

まとめ

一口に一般条項といっても内容は様々であり、中には定めておかないと大きなリスクを負担することになるものもあります。
契約書審査やレビューを行う際には、契約書が対象とする取引の内容を頭に入れた上で、そうした取引と一般条項がどういった関係に立つのかを吟味するとより質の高い契約書レビューが可能となるほか、一般条項の思わぬ意味を知ることができる機会にもなるでしょう。

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この記事を書いた人

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