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電子契約における「タイムスタンプ」とは?電子署名との違いや必要になる理由を解説!

電子契約書の導入とその電子化対応が進む中、電子署名やタイムスタンプを業務で扱う機会が増えていると感じる方も多いでしょう。電子署名とタイムスタンプは、仕組みや役割が異なりますが、電子契約の適切な運用にはいずれも理解が欠かせません。
そこで本記事では電子署名とタイムスタンプの違いや必要になる理由、付与する方法をわかりやすく解説します。

目次

電子契約における「タイムスタンプ」とは?

「タイムスタンプ」とは、時刻認証局発行の時刻情報とハッシュ値(不規則な文字列)を掛け合わせることで、PDFなどの電子データ書類が存在していた日時を証明する技術です。役割としては主に次の2つが挙げられます。

  • 存在証明:記録時点で改ざんが行われていない証明となる
  • 非改ざん性証明:第三者事業者しか発行できないため、改ざんの難易度が高い

電子署名とタイムスタンプの違い

電子署名は、電子証明ともいい、電子契約書の内容に合意したことを証明するものです。書面契約における印鑑の役割を果たしていることから、電子版の印鑑ともいわれています。
一方、タイムスタンプは電子契約書がいつ作成されたかを記録する仕組みであり、存在と非改ざん性を証明するものです。電子契約の締結に必要なものという点では、両者は共通していますが、証明するものに違いがあります。

タイムスタンプの仕組み

タイムスタンプは、時刻認証業務事業者(TSA)によりサービスとして提供されています。タイムスタンプの仕組みは次のとおりです。

  • 電子契約書作成時、時刻認証事業者にハッシュ値を送り、タイムスタンプを要求
  • 時刻認証事業者はハッシュ値に時刻情報を加えて、タイムスタンプを発行

電子契約書を検証する場合は、ハッシュ値を再計算して、タイムスタンプに付与されているハッシュ値と一致するかどうかで照合します。

電子契約にタイムスタンプが必要な4つの理由

電子契約にタイムスタンプが必要な理由は次の4つです。

  • 電子契約書の完全性を満たすため
  • 電子帳簿保存法の要件に沿って保存するため
  • 電子署名の有効期間を長くするため
  • バックデートのリスクを避けるため

それぞれ詳しく解説します。

1.電子契約書の完全性を満たすため

電子契約書は内部改ざんやハッキングなどにより、保存情報が棄損・滅失されるリスクがあります。タイムスタンプを付与すれば、これらリスクをなくして、電子証明保存要件の完全性を満たすことが可能です。

2.電子帳簿保存法の要件に沿って保存するため

電子契約書は電子帳簿保存法の要件に沿って保存しなければなりません。電子帳簿保存法の要件は次の4つです。

真実性の確保タイムスタンプの付与
可読性の確保関連書類の備え付け
見読性の確保
検索機能の確保
参考:国税庁-電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】Ⅱ 適用要件【基本的事項】

以上の点から、タイムスタンプの付与は真実性の要件を満たすために行う必要があります。

3.電子署名の有効期間を長くするため

電子署名法により、電子契約書に欠かせない電子証明の有効期限は最大5年間です。しかし、会社法では事業に関する重要資料に該当する書類の保存期間は10年とされているため、電子契約書の有効保存期間が5年間では足りません。
タイムスタンプを付与すれば、電子署名の有効期間を延長できる「長期署名」が可能となるため、電子契約の有効性を保ったまま、長期間保存できます。

4.バックデートのリスクを避けるため

バックデートとは、契約締結日が契約開始日より後にくる状況のことです。バックデートだからといって、すべての取引が不正というわけではありません。
しかし、不正なバックデートだと判断されてしまうと、文書偽装に該当する可能性があります。タイムスタンプを付与すれば、いつ電子契約書が作成されたのかを客観的に証明しやすくなるため、合法か不正かの切り分けが用意となり、バックデートリスクを避けられます。

電子契約にタイムスタンプを付与する2つの方法

電子契約にタイムスタンプを付与する方法は次の2つです。

  • 時刻認証業務事業者への依頼
  • 電子契約システムを活用する

それぞれ詳しく解説します。

1.時刻認証業務事業者への依頼

時刻認証業務事業者とは、時刻認証局ともいい、認定のタイプスタンプを付与できる事業者のことです。一般社団法人日本データ通信協会の承認を得て登録されています。
時刻認証業務事業者へ依頼する場合、専用のアプリやソリューションを活用しなければならないため、初期費用やランニングコストがかかります。ランニングコストの計算方法は次の2つです。

  • 定額制:毎月一定のコストがかかる
  • 従量制:タイムスタンプを付与するたびにコストがかかる

2.電子契約システムを活用する

電子契約システムを活用して、タイムスタンプを付与する方法もあります。電子契約システムとは、電子契約書の締結をオンライン上で行えるシステムのことです。
電子契約システムによっては、タイムスタンプを付与する機能があります。この機能を活用することで、手軽に電子契約書の完全性・真実性を満たせます。
電子契約システムを提供する企業が、時刻認証業務事業者ではないとしても、タイムスタンプ自体は、時刻認証業務認定事業者による認定スタンプを利用できるのが一般的です。ただし、電子契約システムによって仕様が異なるため、システムのなかにはタイムスタンプ機能がないものもあります。
そのため、電子契約システムを導入する際は、認定タイムスタンプが利用できるかどうか確認しておくことが重要です。

電子契約にタイムスタンプを付与する際の注意点は3つ

電子契約にタイムスタンプを付与する際の注意点は次の3つです。

  • すぐに原本を破棄してはいけない
  • タイムスタンプの利用には料金がかかる
  • 期限内に付与する必要がある

それぞれ詳しく解説します。

1.すぐに原本を破棄してはいけない

タイムスタンプの付与後、すぐに原本を破棄してはいけません。定期検査で電子契約書の内容が法的な条件を満たしているかどうか確認した際、内容に不備があった場合は原本で対処する必要があります。
原本を破棄してしまうと対処できなくなるため、定期検査が完了するまでは保管しておくのがベストです。

2.タイムスタンプの利用には料金がかかる

タイムスタンプの利用には料金がかかります。大量の契約書を取り扱っている企業の場合、毎月膨大な金額を支払う可能性があります。
タイムスタンプの料金体系は「定額制」と「従量制」があるため、導入する際は運用コストも考慮することが大切です。

3.期限内に付与する必要がある

タイムスタンプは期限内に付与しなければなりません。期限内に付与していない場合、契約書の内容が無効となるからです。
タイムスタンプを付与する期限は3営業日以内でしたが、2022年の電子帳簿保存法改正によって最長2ヶ月+7営業日以内に延長されました。期限が無くなると対応を忘れてしまうリスクがあるため、なるべく早く手続きすることをおすすめします。
参考:電子帳簿保存法が改正されました

電子契約にタイムスタンプは必須!

電子契約におけるタイムスタンプの概要や電子署名との違い、必要になる理由について解説しました。電子契約書は紙の契約書に比べ、内部改ざんやハッキングによる保存情報の棄損・滅失リスクは高いといえます。
そのため、電子契約書の存在や非改ざん性を証明し、完全性や電子帳簿保存法の要件などを満たして棄損・滅失リスクを低減させるには、タイムスタンプが欠かせません。そのため、電子契約に切り替えを検討している方は、契約管理システムだけでなく、タイムスタンプにも気を配ることが大切です。

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