【社内の法務リテラシーを向上させるには? 法務部の仕事内容と課題、研修方法など具体策をご紹介】を公開しました ダウンロード

覚書とは?契約書との法的効力の違いやメリット・デメリット、締結するケースを徹底解説!

企業間の取引において、当事者の意思表示が合致している証明書類として、契約書のほかに「覚書」が作成されるケースも少なくありません。このため、法務関連業務に従事する方は、覚書と契約書の違いについて正しく理解しておく必要があります。

本記事では、覚書と契約書との法的効力の違いやメリット・デメリット、覚書を締結するケースについて解説します。また、記載事項や印紙の必要性についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

覚書とは?

覚書は、物事を忘れないように書き残しておくもので、メモ書きや備忘録などを指すのが一般的です。しかし、ビジネスにおいて覚書は、取り決めた事項を明確にするために用いられます。
これは、議事録とは異なり、双方での合意事項を正式に記録するものです。また、契約の内容を変更する際には、変更部分のみを記した覚書が作成される場合もあります。つまり、覚書は合意内容を記録するための文書という役割も持っているため、契約書の一部ともいえます。

契約書との違い

契約書は、取引の基本条件や当事者間の合意事項を明確にするために、作成される正式な文書です。一般的に、取引の内容が複雑であればあるほど、詳細な契約書が必要となります。
一方、覚書は、既存の契約に対する変更や追加事項を記載する補完的な文書として用いられるケースがほとんどです。
たとえば、新たな条件が発生した場合や取引内容の変更が必要になった際に、覚書を作成しておけば、双方の同意を文書化でき、後のトラブルを防ぐ役割が期待できます。

念書との違い

念書は、特定の事項について、約束をした一方が他方に対して差し出す文書であり、約束の内容を明確に示すために使われるのが一般的です。一方で、覚書は双方の合意を得た内容が記載された文書です。
また、念書は、約束を受け入れる側が署名や押印をする場合は少ないですが、差し出す側と受け取る側の双方が内容に合意したことを示します。たとえば、仕事の納期や品質に関する約束などが念書に記載されるケースが多い傾向です。

覚書と契約書の法的効力の違い

実務において、取引先との重要な合意事項は、契約書として文書化されるのが一般的です。会社によっては、契約書と覚書に対する内部承認手続きが異なる場合もあります。
ただし、契約書と覚書のタイトルが異なるからといって、記載内容の法的効力には基本的に差異がありません。しかし、実務上、契約書で合意の大枠を設定して、詳細な事項は覚書で補足する場合、契約書と覚書の内容に矛盾が生じる可能性もゼロではありません。
このため、契約書において事前に矛盾が生じた場合の優先事項を明示しておけば、法的効力の優劣を確定でき、双方でのトラブルに発展するリスクを回避できます。

覚書のメリットとデメリット

次に、覚書のメリット・デメリットについて解説します。
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。

メリット

覚書は、契約書と比べて書面化の手間が少ないため、素早く合意内容をまとめられる点が中小企業にとってのメリットです。口頭での合意に依存するケースが多い中小企業で、覚書を用いれば、担当者の変更などによるトラブルを回避できます。
さらに、覚書は「契約書」と比べてやわらかい印象を与えるため、合意が得られやすいのが特徴です。このため、基本的な合意内容を契約書としてまとめ、重要な部分を覚書として別紙で扱うのもおすすめです。

デメリット

本来、契約書には具体的な権利義務を明確に記載すべきですが、日本の契約慣行では覚書が多用されるケースがあります。このような覚書は、権利義務を曖昧に規定するため、トラブル発生時や訴訟において具体的な権利を主張するのが難しくなる可能性があります。
また、契約書に付随する覚書が増えると、文書の一元管理が困難となり、契約内容を把握するのが困難です。このため、問題解決に時間がかかり、覚書の濫用にはデメリットがあります。

覚書を締結するケースは3つ

次は、覚書を締結するケースについて解説します。

  • 契約書の修正や変更を実施する
  • 契約締結後に契約条件を決める
  • 契約の締結を急いでいる

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

契約書の修正や変更を実施する

企業間の取引が続くなかで、状況の変化に応じて柔軟に契約書の内容を変更する際には、覚書を活用するのが一般的です。覚書を用いれば、契約内容の変更を正式に記録でき、将来的なトラブルを防ぐための証拠としても機能します。
また、覚書は契約書全体を新たに作成し直す手間やコストを削減できるため、企業にとって効率的な方法の1つです。覚書を締結すれば、契約内容の変更履歴を明確に残すことができ、契約書との乖離を防止できます。

契約締結後に契約条件を決める

ビジネスにおける取引では、契約金額や納期、契約期間などの詳細な条件が契約初期の段階では明確に定まっていない場合があります。また、詳細な条件については、双方で念入りに検討したいという場合も少なくありません。
このような場合は、覚書によって現時点で合意できている大まかな条件を文書化し、詳細な条件については今後の交渉で決定するのが効果的です。双方で条件の折り合いがつかない場合には、この方法が役立ちます。

契約の締結を急いでいる

ビジネスの契約においては、まず基本的な合意事項を契約書に盛り込み、細部の取り決めは後から覚書で追加する方法が一般的です。詳細な部分まで完全に合意を得てから契約書を締結しようとすると、時間がかかりすぎてビジネスチャンスを逃しかねません。
こうした問題を回避するため、主要な内容が合意された段階で契約書を締結し、後から詳細を覚書で補完するのがおすすめです。この方法により、迅速に契約を進められるため、ビジネスチャンスを逃さずに済みます。

覚書の記載事項

覚書を作成する際には、重要な情報に漏れがないように注意が必要です。まず、タイトルは「覚書」とするか、「〇〇に関する覚書」と具体的に記載してください。
前文には、合意する当事者の名前を「甲」「乙」と略称で記載し、締結済みの契約書や関連文書がある場合はその詳細も記載します。本文では、双方が合意した内容を箇条書きで明確に記載しましょう。
また、契約内容の変更がある場合は、変更前後の違いを具体的に示す必要があります。後文では、覚書の作成通数と保管者を明記してください。最後に、日付や住所、氏名を記入し、双方が署名・捺印すれば、合意内容を正式に証明できます。

覚書への印紙の必要性

契約書と覚書について、多くのビジネスパーソンが「覚書には印紙が不要」と誤解している場合が多いです。しかし、法律上、契約書と覚書の効力に違いはありません。
このため、覚書の内容が印紙税の課税対象文書に該当する場合、契約書と同様に収入印紙を貼付し、消印する必要があります。この点を怠ると、意図せずとも過怠税の対象となる可能性があるため、注意しなければなりません。

まとめ

本記事では、覚書と契約書との法的効力の違いやメリット・デメリット、覚書を締結するケース、記載事項、印紙の必要性について解説しました。
ビジネスにおいて覚書とは、取り決めた事項を明確にするために用いられるもので、双方の合意事項を正式に記録する役割があります。さらに、既存の契約に対する変更や、追加事項を記載する補完的な文書としても活用でき、契約書との法的効力に差はありません。
このため、覚書の内容が印紙税の課税対象文書に該当する場合は、契約書と同様に収入印紙を貼付し、消印する必要があります。また、契約書と比べて書面化の手間が少ないため、素早く合意内容をまとめられる点がメリットです。
しかし、契約書に付随する覚書が増えると、トラブルが発生した際や訴訟において権利の主張が難しくなったり、文書の一元管理が困難になったりする可能性があります。
これらのポイントをしっかりと理解し、覚書を正しく活用してみてください。

  • URLをコピーしました!
目次