IT導入補助金とは?メリットや申請枠、補助対象の条件について詳しく解説します!
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に利用できる政府の補助制度です。この補助金を活用すれば、企業は業務の効率化や生産性向上を図ることができ、競争力を強化するための支援を受けられます。
本記事では、IT導入補助金の概要やメリット・デメリットについて解説します。また、申請枠や補助対象になる企業の条件、申請する際の注意点についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
IT導入補助金とは?
IT導入補助金は、中小企業および小規模事業者向けの補助金制度で、自社の課題解決やニーズに応じたITツールの導入を支援するものです。2024年2月14日から新たに申請受付が開始されており、労働生産性の向上を目指す企業にとって有益な手段となっています。
また、この補助金は、業務効率化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、サイバーセキュリティ対策、インボイス制度への対応など、多岐にわたるITツールの導入に利用可能です。
対象となる経費には、ITツールの購入費やクラウドサービスの初期費用、ITコンサルティング費用などが含まれます。
IT導入補助金のメリットは3つ
次に、IT導入補助金のメリットについて解説します。
- 購入のリスクがない
- 原則として返済の必要がない
- 採択率が高い
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
購入のリスクがない
IT導入補助金のメリットの1つは、購入のリスクを大幅に軽減できる点です。とくに、中小企業にとって、新しいITシステムの導入は多大な費用とリスクを伴います。しかし、補助金を活用すれば、初期投資の負担が軽減され、経済的なリスクが低減します。
これにより、企業は新しい技術やシステムを導入しやすくなり、業務効率化や競争力向上につなげることが可能です。さらに、補助金制度を通じて信頼性のあるITベンダーと連携できるため、導入後のサポートも受けやすく、長期的なリスクも軽減されます。
原則として返済の必要がない
ITシステムの導入には多額の費用がかかり、その費用を自己資金で賄うのは中小企業にとって大きな負担です。しかし、補助金を利用すれば、その一部または全額を補填できるため、自己資金をほかの重要なビジネス分野に投資する余裕が生まれます。
さらに、返済義務がないため、資金繰りに悩む心配がなく、安心してIT投資を進められます。これにより、企業は最新の技術を導入し、業務効率化や競争力向上を図ることが可能です。
採択率が高い
昨今の制度改正によって、企業のバックオフィスでのDX化や業務のデジタル化が急速に進行しています。このような状況を背景に、最近のIT導入補助金は制度改正への対応を強く支援するものであり、採択率も向上しています。
2023年度の全国採択率は75%を超え、申請した企業のうち約4社に3社が採択されている現状です。これにより、多くの企業が業務効率化や競争力強化に成功しています。
参考:IT導入補助金2023の採択率は?過去の公募回の採択結果も解説|補助金ガイド
IT導入補助金のデメリットは3つ
次は、IT導入補助金のデメリットについて解説します。
- 給付が後払いになる
- ITツールに制限がある
- 事業実績報告が必要になる
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
給付が後払いになる
IT補助金制度では、補助対象となるITツールの導入が完了した後に申請し、審査を経て補助金が給付されます。そのため、事前に自己負担分やツール導入費用の全額を支払う必要があり、一定の資金調達が求められます。
しかし、審査に通過した事実と事業計画書を活用すれば、先払い分の融資を銀行から受けるのは比較的容易です。しかし、赤字が続いていたり、経営に不安があったりする場合は注意しなければなりません。
ITツールに制限がある
自社で希望するITツールが登録リストに含まれていない場合は、補助金の対象外となるため、補助金を利用できません。このように、登録されているITツールはすべての業務分野を網羅しているわけではなく、性能や機能によっては補助金の対象にならない場合もあります。
このため、自社が必要とするITツールが補助金対象として登録されているか、事前に確認するようにしておきましょう。
事業実績報告が必要になる
IT導入補助金を受け取る際には、数年間にわたり、定期的な事業実績報告書の提出をしなければなりません。補助金の不正使用が発覚した場合、採択後であっても補助金の返還や法的な罰則を受ける可能性があります。
不正使用には、ITツール導入費用以外の目的での利用や、虚偽の報告書提出などが含まれます。報告書作成や返還手続きは煩雑であり、報告書にはITツールの導入状況や効果、支出の内訳が必要です。
提出期限や方法は自治体や事業者により異なり、一定期間内に継続した提出が求められます。
IT導入補助金の申請枠は4つ
次は、IT導入補助金の申請枠について解説します。
- 通常枠
- インボイス枠
- セキュリティ対策推進枠
- 複数社連携IT導入枠
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
通常枠
経営課題やニーズに合わせたITツールの導入を促進し、業務効率の向上や売上の増加が目的です。通常枠は2つにわかれており、補助限度額や業務プロセス改善の範囲、従業員の賃金引上げ計画の有無などによって異なります。
通常枠のIT導入補助金は、以下の費用が対象です。
- ソフトウェア購入費やクラウド利用料(利用料最大2年分)
- オプション費用(機能拡張、データ連携ツール導入費用、セキュリティ対策費用)
- 役務の費用(導入コンサルティング、導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポート)
しかし、ハードウェアの購入費用は補助対象外となるため、注意してください。
インボイス枠
「インボイス対応類型」と「電子取引類型」は、インボイス枠における2つの主要な類型です。
電子取引類型は、発注者がインボイス制度に対応したITツール(受発注ソフト)を導入し、受注者である中小企業や小規模事業者に無償でアカウントを提供する際に利用されます。一方、インボイス対応類は、インボイス制度対応を見据えた会計、受発注、決済のいずれかの機能を持つITツールの導入に特化しています。補助金は安価なITツールにも適用され、補助限度額に下限はありません。
また、以前は「EC」が対象機能に含まれていましたが、2024年度から対象外となりました。なお、対象になる経費は以下のとおりです。
- ハードウェア購入費(PCやタブレットは10万円以下、レジや券売機は20万円以下)
- ソフトウェア購入費やクラウド利用料(利用料最大2年分)
- オプション費用(機能拡張、データ連携ツール導入費用、セキュリティ対策費用)
- 役務の費用(導入コンサルティング、導入設定、マニュアル作成、保守サポート)
セキュリティ対策推進枠
「セキュリティ対策推進枠」は、企業がサイバー攻撃による事業停止や生産性低下を防ぐため、サイバーセキュリティ対策を強化するために必要な補助金です。この補助金では、サイバーセキュリティ対策のためのITツール導入経費の一部が補助されます。
対象となる費用は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開している「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスのうち、事前に事務局に登録されたIT導入支援事業者が提供するサービスに限られます。
具体的には、サービス利用料(最大2年分)などが補助対象です。
複数社連携IT導入枠
「複数社連携IT導入枠」は、中小企業や小規模事業者が連携してITツールやハードウェアを導入し、地域DXの実現や生産性向上を目指す取り組みを支援するのが目的です。
この枠組みでは、複数社へのITツール導入をサポートし、連携を効果的に進めるためのコーディネート費用や外部専門家による助言の謝金なども含めて支援されます。
補助対象になる企業の条件
すべての申請枠で中小企業や小規模事業者、個人事業主が対象です。業種分類ごとに「資本金の額または出資の総額」や「常時使用する従業員の人数」のいずれかが一定の基準以下である場合に、補助対象となります。
中小企業の一例
業種・組織形態 | 資本金 (資本金の額または出資の総額) | 従業員 (常勤) |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業(ソフトウェア業、 情報処理サービス業を除く) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
小規模事業者
業種・組織形態 | 従業 (常勤) |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業、娯楽業を除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業、娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
IT導入補助金を申請する際の注意点
「IT導入補助金2024」を申請する際は、必ず交付規程や公募要領を熟読し、適合しているかどうかの確認が欠かせません。「申請の対象となる事業者及び申請の要件」に関する部分を確認し、申請対象となる企業の定義を理解しましょう。
また、事務局が補助事業者を採択・交付決定する際には、経営課題の理解や労働生産性の向上率、国が推進するセキュリティサービスの選定など、さまざまな審査項目が評価されます。
まとめ
本記事では、IT導入補助金の概要やメリット・デメリット、申請枠や補助対象になる企業の条件、申請する際の注意点について解説しました。
IT導入補助金は、中小企業がITツールを導入する際の費用の一部を国が補助する制度です。主なメリットは、採択率が高く、業務効率の向上や売上アップが期待できる点です。また、デジタル化を促進し競争力を強化する効果もあります。
しかし、デメリットとしては、申請手続きが煩雑で時間がかかる点や補助金の対象となるツールやサービスが限られている点が挙げられます。
IT導入補助金2024を申請する際は、交付規程や公募要領を確認し、正しい理解のもとで、申請するようにしましょう。