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契約書の書き方を基本的な構成や注意点、作成の流れまで解説

契約書の書き方を基本的な構成や注意点、作成の流れまでまとめて解説

契約書作成は初めて法務部門に携わる方にとって難しく感じられるでしょう。
重要な書類なので、書き方や構成などがわからず悩む方は少なくありません。
本記事では契約書の作り方や主な構成など押さえるべきポイントを、初めて契約書を作成する方向けにまとめて解説します。
契約書の書き方で迷わなくなる電子契約についても紹介しているので、効率的に契約書作成を行いたい方は最後まで読んでみてください。

目次

契約書とは?覚書や誓約書との違い

契約書とは

契約書とは、契約が締結されていることを証するために作成する書面です。民法第522条第1項に定められているように、契約の締結については相手方の承諾を以て成立するため、必ずしも契約書の作成を必要としていません。
ただし、同条第2項の規定により、書面の作成が義務付けられている契約もあります。建設工事請負契約や農地の賃貸借契約などがこれに該当します。(建設業法第19条農地法第21条

売買契約や業務委託契約においては契約書を作成しなくても契約は成立しますが、契約後のトラブル防止のために民事訴訟法第228条第4項に基づいて署名捺印をした契約書を作成するのが一般的です。

電子契約も電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)第3条により同法第2条第1項に定める電子署名が行われているものは有効な契約となります。書面作成の手間が省けることから利用する企業は増加しており、一般社団法人日本情報経済社会推進協会の「企業IT利活用動向調査2024」によると77.9%の企業が電子契約を導入しています。

覚書や誓約書との違い

覚書は契約の当事者同士が合意した内容を忘れないように作成する書面のため、契約書と共通する部分もあります。しかし、契約書は契約の根幹となる役割として作成される一方、覚書は既存の契約書の内容を補足するために作成されることが多いです。そのため、覚書は契約書の一部として扱われることもあります。
誓約書は提出者が提出先に対して、約束や義務を一方的に負うことについて示した書面です。そのため、双方合意の上で締結する契約書とは役割が異なり、署名捺印は提出者だけが行います。

契約書のレイアウト

契約書のレイアウト

契約書を作成する上で書き方やレイアウトについて法律で特段の定めはありません。そのため、契約書は縦書き・横書きどちらで書いても問題はなく、文体も常体・敬体いずれでもよいです。
ただし、実務では横書き・常体を用いるのが一般的です。特に必要のない限り、横書き・常体を用いて契約書を作成しましょう。

契約書の基本的な構成と書き方

契約書は当事者のどちらが作成しても問題ありません。ただし、自社で作成する方が契約内容を把握した上で契約に臨めるため、可能であれば自社が作成した契約書をベースに話を進めるとよいでしょう。また、自社で契約書を作成すると、有利な条項を盛り込んで契約を進められる可能性があります。
ここからは、契約書の基本的な構成と、各部分の具体的な書き方を解説します。契約書をどのように作成すればよいか知りたい方は参考にしてみてください。


表題部

表題部は契約書のタイトル部分に該当します。タイトルの付け方に規定はありませんが、「業務委託契約書」や「売買契約書」など、契約内容を端的に表すものを付けます。

前文

前文は契約書の前提となる部分で、誰と誰がどのような契約を締結するかを記載します。契約の目的を明らかにし、本文以降で何度も登場する契約主体や名称を「甲」・「乙」・「丙」や「本契約」と略称を用いることについて定めます。

(記載例)
売主〇〇(以下「甲」という。)と、買主〇〇(以下「乙」という。)は、以下の通り売買契約(以下「本契約」という。)を締結する。

本文

契約書本文の書き方

本文は契約の中身となる重要な部分です。契約書の本文には契約内容や当事者双方の権利と義務の内容に沿って規定を記載します。いくつも規定を作成するので内容ごとに「条」を立て、その内容をかっこ書きで端的に記載し、何を規定する項目なのか明示します。「条」の内容を「項」・「号」で必要に応じて細分化し、詳細に契約内容を定めることも大切です。
本文では、どのような契約にも必要な規定を記した一般条項と、個別の契約において特有の規定を記す主要条項(個別条項)の2つを記載します。各条項の書き方と「条」・「項」・「号」の書き方を詳しく見ていきましょう。

(記載例)
第1条(目的)
 甲は乙に対し、以下の物品(以下、「目的物」という。)を売り渡し、乙はこれを買い受けた。
   目的物の名称:
       数量:
第2条(代金および支払い方法)
 目的物の単価は金〇〇円也とする。売買代金は、総額金〇〇円也とする。乙は、目的物の代金を、甲の指定する銀行口座に振り込む方法によって支払うものとする。振込手数料は乙が負担するものとする。

一般条項

どの契約にも共通する規定を記した部分です。契約期間や契約解除の方法などを定める条項が該当します。一般条項で定める主な内容は次のものです。

  • 契約の目的
  • 契約期間
  • 契約解除(中途解除)
  • 秘密保持
  • 反社会的勢力排除(暴排)
  • 損害賠償
  • 契約変更
  • 通知方法
  • 不可抗力
  • 譲渡禁止

主要条項(個別条項)

個別条項は、契約独自の内容を規定する部分です。契約対象となる業務・サービスの内容や報酬金額、報酬発生条件などを具体的に規定します。

条・項・号の書き方

契約書本文の規定内容を項目立てる際、「条」・「項」・「号」を用いるのが一般的です。大項目として「条」を立て、「条」を細分化する際に「項」を、「項」をさらに細分化する際に「号」を用います。
「条」は「第1条」、「第2条」、「項」は「1.」、「2.」、「号」は「(1)」、「(2)」とそれぞれ表記方法を分けて記載します。「条」・「項」・「号」の表記方法に決まりはないので「項」を「(1)」、「(2)」として「号」を「①」、「②」としてもよいです。
また、法律の表記に倣い、第1項については数字を記載しない方法を取る場合もあります。

後文

後文は、本文の後に続く締めくくりの部分です。後文では契約書を作成する通数とその契約書を誰が所持するのかなどを記載します。契約書の部数や所持者は、直接契約内容に関与しませんが、契約に関してトラブルが生じた場合に原本の通数や所持者の証明が必要となることがあるため、記載するのが一般的です。
ただし、契約書の通数や所持者を定めることについて法律で定められてはいないため、必ずしも記載する必要はありません。

(記載例)
以上、本契約の成立を証するため、甲および乙は、本書を2通作成し、各自署名捺印の上、各1通を保有する。

契約書作成日

契約書作成日を記載します。多くの場合、日付を空欄で作成し、署名捺印をするときに日付を記載します。そのため、契約締結日と契約書作成日は同日で扱われることが多いです。
法的には和暦で記載しても問題はありませんが、西暦で記載しておけば、元号が変わっても契約書のひな形を変更する必要がなくなります。
契約後に相手方とのやり取りの中で「〇年〇月〇日付売買契約」などと日付と表題を組み合わせて契約を特定し、意思疎通を図るのが一般的です。

署名欄

契約当事者それぞれが署名捺印を行う部分です。法人が契約主体となる場合は、「株式会社◯◯ 代表取締役 ◯◯」などと、契約を委任された者の氏名と立場を記載します。
連帯保証人や仲介人など当事者が他にもいる場合、全員の署名捺印欄も必要に応じて設けます。

(記載例)
甲(売主):住所・氏名(法人の場合は会社名・代表者名)
乙(買主):住所・氏名(法人の場合は会社名・代表者名)


契約書の書き方で気をつけるポイント

次に契約書の書き方で気をつけるべきポイントを3つ紹介します。契約書を作成する上でどのようなポイントを押さえておくとよいのか解説するので、参考にしてみてください。

  • 第三者が見てもわかる言葉を用いる
  • 事前に両者で内容を協議する
  • 法令違反となる規定がないか確認する

それぞれ順番に見ていきましょう。

第三者が見てもわかる言葉を用いる

誰が読んでも意味が通じる言葉を用いて契約書を作成することで、当事者間で異なる解釈をしてしまうトラブルを防げます。訴訟に発展した場合においても、契約書の内容がわかりにくいと異なる解釈をする余地があると判断され、自社に不利な状況を作ってしまう可能性があります。
専門用語や当事者間でだけ通じる言い回しは避け、第三者が見ても契約内容が理解できるように記載しましょう。

事前に両者で内容を協議する

いきなり契約書の原本を作成して相手方に送るのではなく、一度ドラフトをどちらかが作成し、それをたたき台にした両者の協議を経てから原本作成に入るようにしましょう。
両者が事前に規定内容を確認し、同意した状態でないにもかかわらず原本を作成してしまうと、トラブルになる可能性があります。

法令違反となる規定がないか確認する

契約内容が法令に違反していないか事前に確認してから契約締結に進むようにしましょう。可能であれば弁護士や行政書士にリーガルチェックをしてもらうのも一つの手です。特に初めての契約や大きな契約を締結する際は入念にチェックを行う必要があります。
自社でチェックする場合は、法律によって定められた事項が契約書に明記されているか、関連する法律に違反していないかといった視点から確認すると効率的です。

法律に違反した契約内容の有効性

万が一法律に違反した内容を契約書に定めていた場合、その契約書の有効性はどのようになるのかを3つの観点から解説します。法律と異なる内容を契約書で規定する場合、契約書に記載された内容が無効になる場合とそうでない場合があります。
それぞれ詳しく解説するので、参考にしてみてください。

強行規定

強行規定とは、法律の内容が契約書で取り決めた内容よりも優先される規定です。そのため、法律に違反する内容を契約書で定めても無効になります。
強行規定の例として、利息制限法第1条が挙げられます。利息制限法第1条では金銭の消費貸借における利息の上限を定めており、上限を超える利息を契約で定め双方が合意していたとしても、上限を超える利息については法律が優先的に適用されるため無効です。
強行規定は社会の秩序を守るために最低限のルールについて法律で定めたものであるため、契約で自由に変えられないようになっています。

任意規定

任意規定とは、法律の規定とは異なる内容を契約で個別に定められる規定です。そのため、法律とは異なる内容を契約書で定めることが可能です。また、契約による定めがない場合は法律の内容が適用されます。
任意規定の例として、商法第526条の商人間の売買において目的物に瑕疵があった場合の飼い主の損害賠償の権利が挙げられます。商人間の売買契約において目的物に瑕疵があることを発見した場合、買主はただちに売主に通知することで、その不適合を理由とする損害賠償の請求などを行うことができます、しかし、これは任意規定のため、契約書の中で「売主は商品に瑕疵があっても責任を負わない」と規定されていれば、法律よりも契約内容が優先されるため、売主は損害賠償責任を負いません。

取締規定

取締規定とは、行政上の観点から一定の行為を取り締まる法律の規定です。行政上の目的のために定められているものであるため、取締規定に違反した場合、罰則対象にはなりますが、契約の有効性は失われません。
例えば、食肉販売の業を行うには、都道府県知事の許可が必要であると食品衛生法第55条で定められています、しかし、これは取締規定であるため、無許可で行えば処罰を受けることになりますが、無許可の状態で締結した売買契約自体は無効になりません。(最判昭35.3.18

契約書作成の流れ

実際に契約書を作成する際の業務フローは次の通りです。

  1. 契約内容の確認
  2. ドラフトの作成
  3. 双方による確認・修正
  4. 契約書の製本・署名捺印
  5. 収入印紙の貼り付け
  6. 原本の郵送・保管

契約書の作成にあたっては郵送代や印紙税などの費用が発生します。契約書は重要な書類のため、郵送する際は、特定記録郵便など配達状況が確認できる方法で発送する必要があります。契約書の郵送方法については、以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてみてください。

また、郵送代や印紙税などのコストがかからない契約書として電子契約書を活用する企業が増えています。次章では電子契約書の書き方についても解説します。

電子契約書の書き方

電子契約書を作成する際も基本的には紙の契約書を作成する場合と書き方は同じです。ただし、後文の内容を次のようにする必要があります。

(記載例)
以上、本契約の成立を証するため、甲および乙は、本書の電磁的記録を作成し、甲および乙が合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。この場合、本契約においては、本電磁的記録を原本とし、本電磁的記録を印刷したものは写しとする。

電子契約においては署名捺印ではなく、電子署名を施すことや紙の原本を作成しないことを踏まえて後文の内容を変更します。電子契約も電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)第3条の規定により、同法第2条第1項に定める電子署名がなされているものは法的に有効な契約です。

ただし、事業用定期借地契約(借地借家法第23条第3項)や任意後見契約(任意後見契約に関する法律第3条)などは公正証書によって契約締結をする必要があるため、電子契約ではなく書面での契約が義務付けられています。
前段で紹介した建設工事請負契約などは契約書の作成が義務付けられていますが、相手方の承諾が得られれば電子契約も可能です(建設業法第19条第3項同法施行令第5条の5第1項)。

電子契約書管理ツールを使えば契約書の書き方にも迷わない

前章で解説したように、電子契約も法的に有効な契約です。電子契約書を活用すれば、契約書の管理や郵送代・印紙税といったコスト削減が可能です。しかし、電子契約書をPDFファイルで保存するだけでは、格納場所を探すのに時間がかかってしまう場合があります。
また、過去の契約における契約条項を参照したい場合に条項部分から契約書を探すことができず、検索性に優れません。
電子契約書を管理する際は電子契約書管理ツールを活用することで、これらの問題を解決できます。電子契約管理ツール「リーガレッジ(Legaledge)」なら、契約の度に契約条項を一から作成しなくても、過去の契約書を検索し、契約条項だけをコピーすることも可能です、電子契約書を効率的に管理し、書き方に迷うことなく業務を進めたい方は以下の製品ページから詳しい情報をご覧ください。

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