契約書管理とは?契約業務を効率化する方法を解説
「契約の更新が近いから、今の契約書出しておいて。」
「取引先から入金ないけど、取り決めはいつだっけ。契約書ある?」
担当者や法務部員なら、このような時、契約書や関連書類を探すのに時間を費やした経験があるのではないでしょうか。契約書は発注書や請求書などと同様に、取引に欠かせない重要なものです。近年ではデジタル化の潮流もあり、電子契約の普及で管理方法も多様化しています。本記事では、契約書管理に関するトラブルを防ぎ、業務効率化をするためのポイントをご紹介します。
契約書管理方法と作成目的
契約書、どう管理?そもそも、なぜ作成?
会社はどうやって契約書を管理したら良いのでしょうか。取引によっては契約書を作成しないケースもあり、実態が分かりにくいものです。民法では契約は一方からの申込みと、相手方からの承諾により成立し、一部を除いて書面の作成は不要とも書かれています。
第五百二十二条
1 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
それならば契約書の管理を行う必要はないのでは?とは思わないでください。契約書は必要だから作成しています。その理由を以下でご説明します。
契約書作成の目的(意義)とは
契約書を作る目的は3つあります。紛争の予防、客観性の確保、コンプライアンスです。以下で、具体例も用いながらそれぞれ説明します。
紛争の予防
ある人が知人から「必ず返すのでお金を用立ててほしい」と頼まれたとする。貸した人は徳の篤い(あつ)人であり、相手を信用して何も書類を作成せずにお金を貸した。ところが、いざお金を返してほしいと要求したところ、借りたのではなく貰ったのだと反論されてしまった。
この例では書類(金銭消費貸借契約書)を作らなかったために、借主に裏切られてしまいました。さらに契約書は、争いが裁判に発展した時にも有効な証拠となります。そのため紛争の予防は、契約書作成の大きな目的と言えます。
客観性の確保
契約とは、合意により人と人と間の権利義務関係を形成するものであり……(一部省略)……書面により客観性を確保し、その内容について一義的にしておくことが望ましい。
契約書には取引内容を記録し、言った言わないの水掛け論を防ぐという目的があります。
コンプライアンス
実務上、法令を順守したことについて何らかの書面を残すことがコンプライアンスの観点上から要請される傾向にある。例えば、税法上の特別措置に該当することを契約書で明示的に規定する例がある。
前述の客観性の確保を対外的に講じる目的とも言えます。
参考:契約書作成のプロセスを学ぶ(第2章契約書作成のポイント1⃣契約書作成の意義、発行所……㈱中央経済社、著者……鈴木学、豊永晋輔)
契約書管理は企業の成長に不可欠
紛争の予防、客観性の確保、そしてコンプライアンスの3つの目的で契約書は作られ、管理されています。契約書管理に穴があると、会社は事業の推進を思い切って進めることができません。
契約書管理を面倒にする属人化という問題
なぜ属人化してはいけないのか
属人化の属(ぞく)には「つきしたがうこと」という意味があります。すなわち業務の属人化とは、ある人に業務が「つきしたがって」しまい、その結果、特定の従業員しか業務内容や業務フローが分からなくなる状態のことを指します。しっかりとした契約書管理をするには、属人化の解消が必要となります。
契約書管理の標準化
属人化の対義語は標準化で、一般的には業務マニュアルを整えることで業務の標準化を図り、属人化を防ぐと言われています。
しかし契約書管理は、個々の契約ごとに取引先や取引条件が異なることや、交渉段階での個別の判断がもとになって契約書が完成することから、マニュアルで全てを標準化することは難しいのが実情です。そこで多くの企業では、過去の契約書をファイリングして整理したり、エクセルの表を活用することで、業務の標準化や効率化を目指しています。
契約書管理のポイントをトラブル別に解説
契約書管理の効率化には、トラブルを回避する視点も欠かせません。それは契約書本来の目的である紛争の予防にもつながります。以下では仮想のシーンを用いて、トラブル別に効率化のポイントを解説します。
契約書×台帳管理 契約書の紛失を防ぐ
Aさんは会社の法務部員です。X事業部の契約書チェックを10年近く担当しています。
ある日不慮の事故でAさんは入院することになりました。事故から1週間が経過しましたが、まだ出社の目途は立っていません。
X事業部からは新たな契約書チェックの依頼が続々と来るものの、Aさんの机やキャビネットから過去の必要な契約書を探すところからのスタートとなり、チェック作業は難航。確認に時間を要したことで、締結を延期せざるを得ない事態となりました。
契約書を締結する都度、必要な情報は一覧にして一元管理することが合理的です。例えばエクセルを上手く使えば、入力の手間はかかりますが、データなので検索が簡単です。またセキュリティ面がしっかりしていれば、社内でデータを共有することも、業務効率化に繋がります。
契約書×条文テンプレート 契約書の標準化をサポート
Bさんはこの春、中途採用でX社へ入社した法務部員です。他社でのキャリアを買われ、X社でも契約書の作成を担当することになりました。
しかし上下関係を重んじるX社の社風に馴染めず、Bさんはある日突然退社してしまいました。残された契約書には独自のノウハウが盛り込まれていた為、他の社員が理解することは容易ではありません。その後契約期間満了まで、X社は契約書の対応に多くの時間を費やすこととなりました。
契約業務には個別の取引条件から関係法令まで、多くの情報処理を必要とします。
企業内弁護士を置かない場合は、専門家のひな形をベースに、担当者が条文を追加、修正を行い、契約書を完成させるのが一般的です。そしてこの際に、社員の能力や価値観の差が契約書の出来・不出来に影響します。その点、自社の取引条件基準などに合わせた契約書や条文のテンプレートが用意されていれば、担当者毎のバラつきを無くし、標準化することができます。見慣れた条文ならば、契約書の確認も手際よく進められるでしょう。
契約書×更新アラート 契約書の締結漏れを解決
Cさんは法務部の係長として、チームの業務を管理するベテラン部員です。しかし近年は部下の欠勤が多く、Cさん自身が案件の掛け持ちを余儀なくされています。そんなある日経理部から、取引先との支払いトラブルが発生したと連絡が入りました。Cさんはすぐに契約書を確認しようと動きましたが、該当の契約書は見つからず、後に更新業務に漏れがあったことが判明しました。
契約書には契約期間の定めがあり、ビジネスでは適宜更新をして取引を継続します。担当する会社が1社なら、更新業務はそれほど負担ではないかもしれません。しかし現実には、取引先の掛け持ちなどで複数の契約書を同時に管理する必要があります。
更新期限を知らせるという機械的な作業を、文字通り「機械」に任せてしまえば、担当者は取引内容の交渉に、法務担当者は担当者の法務支援や対外的な折衝業務など、ビジネスを有利に進めることに注力することができます。
契約書管理はシステムで効率化
契約書を適切に管理することで、紛失や更新ミスというトラブルを回避でき、管理に伴う現場の負担を軽くすることができます。
契約書の管理には、契約書管理システムの導入がおすすめです。契約書管理システムの導入によって、契約書の更新期限管理や紙の契約書の管理など様々な業務を効率化することができます。契約書管理業務を効率化し、より重要な業務へ注力が可能となるようにシステムの導入を検討してみましょう。
ビジネスチャンスを逃さない為に、自社の契約書管理も一歩進めましょう。