リーガルテック導入の予算を確保するための3つのポイント
リーガルテックの導入は業務の効率化や属人化の防止など様々な効果が期待できます。他方で法務部門のような管理部門への予算の投入は社内での理解が得られにくく、こうした点が障害となってリーガルテックの導入が進まないという会社は多く見られます。そこで、今回はリーガルテック導入のための予算確保に向けてどう行動すべきかについて解説します。
法務部門と予算の確保
業務の効率化や属人化の防止など様々なメリットのあるリーガルテックですが、導入には当然予算が必要となります。しかし、法務部門のような管理部門における予算の確保には様々な課題があります。そこで、こうした課題と予算を確保するための考え方について解説します。
法務部門や管理部門とコスト
リーガルテックを導入することで業務の効率化などを図る一方、法務部門をはじめとする管理部門は、事業部門と異なり利益をあげる業種ではありません。そのため、コストセンターであり、こうしたコストセンターへの新しいツールやサービスの導入のための予算確保は一般的に社内での承認が得られにくい傾向にあります。
特に法務部門は予防法務を通じて、違法な状態や紛争が起きていない、いわゆる平常時を保つこともミッションの一つのため、問題が無い状態なのだから予算をかける必要はないと思われがちであり、管理部門の中でも特に予算承認を得るのが難しいという側面があります。
法務部門の費用対効果とは
では、予算承認を得るためにはどういった考え方をすべきでしょうか。オーソドックスなのは、やはりリーガルテックを導入することによる費用対効果を元に説得することでしょう。では、リーガルテックを導入することによりどのような費用対効果を主張することができるでしょうか。
リーガルテックのうち電子契約を導入した場合には紙の契約書がなくなるため、以下の様な費用が軽減できます。
- 郵送費
- 紙代、封筒、切手代
- 収入印紙代
- 人件費(郵送や製本等に要していた時間分の費用)
このうち最も大きな金額を占めるのが収入印紙代です。収入印紙は契約の内容により金額が異なりますが、売買基本契約など継続的取引のために締結される文書であれば7号文書として一通4000円の収入印紙が必要となるケースもあるため、契約書1通辺りにかかる費用としては決して看過できるものではありません。
そこで年間でどのくらいの収入印紙代が発生しているかを試算し、それが不要となるということを説得の根拠とするのは一つの説得力を持った数字となるでしょう。
リーガルテック導入予算確保のためのポイント
ここまではリーガルテック導入のための予算確保についての考え方を主に解説してきました。ここからは具体的に予算確保にむけてどういった点がポイントになるか解説します。
ポイント1:
業務のIT化、DX化と結びつける
働き方改革などの影響を受け、現在業務や会社の事業のIT化・DX化に取り組んでいる会社は多く見られます。リーガルテックの導入は業務のIT化やDX化に相当する部分も多いため、こうした全社的な動きとマッチする形で提案を行うことは提案を受けた側にとっても受け入れやすいものとなるでしょう。
そして、こうしたIT化やDX化は情報システム部門が主管部門となっているケースは少なくありません。そこで、情報システム部門と協力し、業務のIT化やDX化の一環としてリーガルテックの導入予算を確保することがポイントとなります。
ポイント2:
業務における課題への解決策として提案する
他部門から見た際に法務部門の業務は専門性が高いため分かりにくく、業務上どのような課題を抱えているのか伝わりにくい側面があります。そのため、これまでよりも効率的に業務の遂行が可能となるというメリットのみを強調しても、説得がしにくくなりがちです。
そこで、業務の課題として他部門であっても共感の得やすい業務の属人化といった課題にリーガルテックが役立つという観点から提案することもポイントとなります。
ポイント3:
コストの削減効果があることを提示する
先ほども少し触れましたが、リーガルテックを導入し電子契約化した場合には収入印紙代をはじめとする様々な費用の削減が可能となります。こうした費用は年間の収入印紙代や頻繁に用いられる契約類型によっては大きな金額とならない可能性はありますが、それでもやはりコスト削減効果があるという点を提示しないのは他部門からの共感を得にくくなってしまいます。
収入印紙代以外にも締結後の契約書の管理業務に割いていた時間の人件費など、契約書に関する業務のうちリーガルテックによって効率化が可能となった時間の人件費を徹底的に算出しておくことも他部門の理解を得るためのポイントとなるでしょう。
業務のIT化・DX化や課題解決につながるリーガルテックツールの紹介
ここからは法務部門が抱える課題の解決と予算確保につながるリーガルテックについてご紹介します。合わせてこちらの記事にもリーガルテックツールについてご紹介しております。ぜひご覧ください。
契約書審査業務の属人化解決におすすめのサービス
Legalforce
Legalforceは、AIによる契約書レビュー機能を有するAI契約書審査プラットフォームです。
AIによる契約書のリスク提示がなされるため、契約書審査業務におけるスキルの平準化やノウハウの共有に役立てることが可能です。こうしたスキルの平準化やノウハウの共有は契約書審査業務の属人化解消につながります。
GVA assist
GVA assistは、250種類以上の契約書に対応したAIによる契約書レビュー支援サービスです。不足条文の検知をAIが行うため、契約書レビューのスキルの平準化やノウハウ共有に役立つほか、形式的なチェックも行われるため、契約書審査へかかる時間短縮にもつなげることが可能です。そのため、より多くの契約書審査や重要な契約書への集中を図ることができ、部員全体のスキルの向上も期待できるといえるでしょう。
契約書関連業務にかかる費用の削減におすすめのサービス
クラウドサイン
クラウドサインは弁護士ドットコムが提供している電子契約サービスです。電子契約を導入することで紙の契約書が不要となるため、契約書に関する業務で要していた費用のうち郵送費や印刷費、収入印紙代などを削減することが可能となります。
また、クラウドサインは最短3ステップで契約締結まで至ることができるため、人件費の節減にもつなげることが可能です。
ContrS CLM
ContractS CLMは、電子契約の締結だけでなく契約書の作成から管理業務など、契約書にまつわる業務をワンストップで行えるサービスです。電子契約の導入によるメリットだけでなく、契約書の更新等の管理業務も可能なため、これまで紙の契約書を管理するために割いていた人件費の節減につなげることが可能となっています。
リーガレッジ
リーガレッジは契約書を電子ファイルとして登録・管理できるサービスです。契約書管理だけでなく、電子契約サービスと連携することで、締結から保管管理までカバーすることができます。電子ファイルの形式で契約書を保管することでいつでも簡単に必要な契約書の内容を確認でき、契約書の更新管理や期限管理機能を用いることで、契約書の更新等が必要な時期に通知を受けることもできるため、契約書管理業務の人件費や工数削減が可能となります。
また、過去に締結した契約書を参照する機能があるため、契約書作成にあたっての品質やスキルの標準化も期待することができるサービスです。