企業法務とは?重要性や具体的な役割、求められるスキルを解説します!
企業活動に関する法律事務を意味する「企業法務」の役割は非常に重大です。しかし、具体的な担当者がおらず、外部の機関や弁護士に実務や判断を任せているケースも見受けられます。そこで本記事では、企業法務の意味や重要性、具体的な役割、求められるスキルについてわかりやすくご紹介します。
法務部に専任者がおらず、法務業務は兼任や一人で行っているケースは珍しくありません。以下の資料では人材不足の法務部の課題を整理し、解決策を提示しております。よろしければご覧ください。
企業法務とは?
企業法務は、企業活動における法的課題の専門家です。その活動範囲は、契約書の整備から取引先や消費者との法的紛争の解決、組織の法令順守状況の監査に至るまで多岐にわたります。
企業の活動内容や規模により、具体的な業務内容は異なりますが、共通の目的は法令を守りながら業績を最大化することです。これらの法令順守の重要性は、個人や組織の規模に関係なく普遍的です。
特に、企業の活動規模が大きくなれば、関係者や利害関係が拡大し、法的な課題も複雑化します。そのため、企業にとって、法令遵守は業務の安定性を保障する不可欠な要素となります。
大手企業では、このような課題に対処するため専門の法務部を設置することが一般的です。対照的に、中小企業では専門部署を持つことは難しい場合もありますが、その重要性は変わりません。
多くの中小企業は、法務専門家へのアウトソーシングや、総務部門による法務対応を行っています。ただし、総務だけでの対応はリスクが伴うため、専門の知識や支援が求められる場面も多々あります。
企業法務の重要性
企業法務の役割の重要性は、古くから認識されていましたが、最近ではその価値が一段と高まっています。その背景には、事業環境の変化、特に情報技術の進化やグローバル化によって、ビジネスの複雑性が増していることが挙げられます。
この変動の中で、予防法務の重要性が高まっているのは、将来のリスクを予め回避したい企業が増えているためです。また、SNSの普及により、一つの問題が大きな影響を及ぼす可能性が高まり、法務における役割の重要性を再認識することは避けられない課題といえます。
法務部の具体的な役割は4つ
法務部の具体的な役割は以下の4つです。
- 臨床法務
- 戦略法務
- 予防法務
- ジェネラルコーポレート
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
- 臨床法務
臨床法務とは、企業が直面する法的トラブルや訴訟を解決する際の法務対応のことです。主に、損害賠償請求やクレーム対応、企業の不祥事の対応といった問題がその範疇に含まれます。
臨床法務の最大の目的は、トラブルに起因する金銭的・評価的損失を最小限に抑えることです。そのため、臨床法務担当者はトラブルの解決を目指し、場合によっては専門家や外部の弁護士の助力を得て業務を進行することもあります。
- 戦略法務
戦略法務とは、単なるリスク管理を超え、企業の経営戦略と深く結びついた法務のアプローチを目指します。つまり、法的リスクを避けるだけでなく、それをビジネスチャンスとして最大化する視点が必要です。
具体的には、新規事業の立ち上げやM&Aの際に、経営陣に対して法的リスクをもとにした戦略的提案が求められます。この法務のアプローチを効果的に実行するには、法的知識だけでなく、マーケティングやIT、財務といったビジネス全般の深い知識を要します。
- 予防法務
予防法務とは、企業活動中の法的トラブルを未然に防ぐための施策や対策を中心とした法務のことです。主な業務としては、契約審査が挙げられ、契約の内容をリスク回避の観点から確認・修正する活動を行います。
さらに、社内規程の整備や更新、法務関連の業務プロセスの最適化もこの領域の中核業務です。つまり、予防法務は法的リスクの発生を前もって予測し、それを適切にコントロールするための体制構築を担います。
- ジェネラルコーポレート
企業の法務部は、株主総会や取締役会の運営、会社法に従った手続き、コンプライアンスの策定・運営、債権回収などが業務内容です。
上場企業の場合は、有価証券報告書などの公開文書の作成・公開が必要ですが、非上場企業も財務書類の作成や株主総会の資料作成が求められます。労務の観点からは、ハラスメント予防やコンプライアンスの研修が重要となっており、情報保護や基本的な法律についての研修を実施するケースもあります。
企業の法務担当者に求められる5つのスキル
企業の法務担当者に求められるスキルは以下の5つです。
- コミュニケーションスキル
- 分析スキル
- プレゼンスキル
- 学習・調査スキル
- 交渉スキル
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
- コミュニケーションスキル
法務の領域では、高度なコミュニケーション能力が不可欠です。特に重要なのは「ヒアリング力」です。なぜなら、法務担当者として、多様な相談を迅速かつ正確に捉えるためには、質問を繰り返し、問題点を見極める能力が必要といえるからです。
また、分かりやすい「説明力」も欠かせません。法的専門用語は専門外の人々には分かりにくいものです。そのため、「契約審査のコメントが分からない」といった誤解を生む事態を避けるためも、複雑な内容を分かりやすく、そして正確に伝えるスキルが必要となります。
- 分析スキル
法務の専門家には、高度な「分析力」が求められます。法的な問題は、明白な形で現れることは少なく、一見しただけでは見過ごしてしまうかもしれません。そのため、法務担当者は、提供された資料や情報を鋭敏に読み取り、深い分析を行って問題の核心を明らかにする能力が必要です。
さらに、ただ問題を指摘するだけでなく、実効性のある「解決策を提案する能力」も重要です。これには、法律の知識だけでなく、経営やマーケティングの視点からも状況を評価できる「ビジネスの判断力」が求められます。
- プレゼンスキル
企業法務に必要なプレゼンスキルは、単に情報を伝えるだけではなく、受け手側の社員たちが内容を正しく理解し、実践に移せるような説得力が必要です。
このスキルによって、従業員のリーガルリテラシーが向上し、コンプライアンス体制が機能し、持続的に運用される基盤が築かれます。そのため、企業の成功には、情報を伝えるだけでなく、その情報を行動に移せるように導く力が求められています。
- 学習・調査スキル
事業の発展とともに、法令のアップデートは避けられないのが事実です。そのため、法務担当者の情報収集・調査能力が不可欠となります。
ただ法律の変更を追うだけでなく、社会動向、競合の動き、業界ニュースなど幅広い情報をキャッチアップすることが求められます。これにより、事業戦略の構築や他部署との連携が円滑になります。
企業法務の担当者は、日々の学習で、時代の変化に対応し続ける力を養成することが重要です。
- 交渉スキル
企業法務は緊急性や期限が重要な業務が多く、これらに対応するには、他部署や外部パートナーとの調整が不可欠です。こうした状況では、ただ要望を相手に伝えるだけでなく、相手の立場や課題を理解し、最善の結果に導く交渉力が求められます。
これらの効果的な交渉は、信頼関係の構築と維持にも繋がり、長期的なビジネスパートナーシップを築くうえでの鍵となります。
リーガルテックの導入で法務の効率化を
ここまで、企業法務の重要性や法務部の役割、求められるスキルなどについて紹介してきました。企業法務には専門的な知識はもちろん、さまざまなスキルの修得が必要です。
また、業務内容も重要かつ多岐にわたるため、業務を円滑に進められなければなりません。特に、法律業務に多い書面に関する作業は、ファイリングやスキャンなど手作業が多いうえ、押印や紙の郵送には時間もかかるという特徴があります。
このような状況では、本来の役割であるリスク管理やコンプライアンス業務に時間や手間ばかりがかかり、最悪の場合はリスク管理が疎かになる可能性があります。
そのため、リーガルテックを導入し、IT技術の活用による業務効率化や精度向上を図ることが大切です。法務業務を助ける法務DXツールをこちらよりご紹介しておりますので、よろしければご覧ください。