契約書の割印とは?押し方と位置、失敗した場合の対応を解説
紙の契約書を使用する場合は、改ざんなどを防ぐ目的で「契印」や「割印」が必要です。ただし、役割や正しい押し方、位置について理解できていないケースも少なくありません。
そこで、本記事では法務業務に携わる方向けに契約書における割印や契印の法的意味や、失敗した場合どうすればよいか、また正しい押し方と位置について解説します。
割印とは?
「割印」とは、同一の契約書が2部以上存在する際、各契約書に契約者全員の印影をまたがるようにして押される印鑑です。契約書が複数ページある場合、ページをめくり、紙1枚にしてから重ねて押印します。
割印を押しておけば、契約書の印影を照らし合わせることで、契約書が同一のものであることを証明でき、原本を不正にコピーされたり、改ざんされることを防止できます。
割印に使用する印鑑は、署名・押印に使った印鑑と同じものである必要はありません。
契印との違い
「契印」とは、すべてのページの綴じ目部分に押す印鑑です。割印と契印はどちらも、書類にまたがって押印する方法であるため、混同されがちです。
しかし、両者には押印する目的とシーンに明確な違いがあります。割印は2部以上の契約書や領収書を作成する際に使用されます。前述のとおり、契約書が同一のものであることを証明して、文書の複製・改ざんを防止することが目的です。
一方の契印は、1つの契約書が複数ページにわたる際に使用され、ページの連続性を示すことで、文書の差し替えや抜き取りを防止することを目的としています。
契印で使用する印鑑は、署名・押印に使ったものと同じものでなければいけません。
他の印鑑との違い
他の印鑑とはどのような違いがあるのでしょうか。以下で簡単に解説いたします。
- 訂正印:文書を訂正する際に使用する印鑑です。誤りがある箇所に二重線を引き、その上から押印します。文書の作成者自身により訂正が行われたと証明する意味があります。
- 捨印:訂正が発生した場合に備え、あらかじめ余白に訂正印となる印を押しておく印鑑です。訂正が発生した際には、捨印の横に訂正内容を記載することで、捨印を訂正印として利用することができます。
- 消印:収入印紙と台紙にまたがって押すことで、収入印紙が使用済みのものであることを示す印鑑です。流用・再使用を防ぐ意味があります。
- 止印:文書の末尾に押される印鑑です。文書の内容がここまでであるということを示し、不正に内容が追加されないようにする意味があります。
割印の正しい押し方と位置について
割印の正しい押し方と位置を以下の3シーンに分けて解説します。
- 契約書と写しに押す場合
- 3通以上の契約書に押す場合
- 領収書と写しに押す場合
それぞれ詳しくみていきましょう。
契約書と写しに押す場合
契約書の原本と写しに割印を押すのは、文書の関連性を示すのが目的です。そのため、書類を重ねた状態から、少しずらし文書にまたがる形で割印を押します。
3通以上の契約書に押す場合
契約書が3通以上の場合でも、すべてに印影を残す必要があります。印章の長さが足りないという場合、2箇所に割印を押すことも可能です。
ただし、割印を2回押す必要があるため、その分契約書作成の手間がかかります。縦長の印章を必ず使わなければいけないことはありませんが、3通以上の契約書に割印を押す頻度が多い場合は、割印用に縦長の印章を用意しておくとまとめて押すことができ、対応しやすくなるでしょう。
また、契約書は二人以上が署名・押印している時は全員分の印鑑が必要です。
領収書と写しに押す場合
領収書と写しの場合は、切り取り線がまたがる場所へ割印を押します。領収書に割印を押して発行者が写しを保管していれば、取引記録を残せます。
これにより、取引先から金額が間違っていると連絡があった際、控えと照らし合わせて整合性をとることが可能です。
割印に使う印鑑の種類について
割印に使用する印鑑の種類にルールはありません。ただし、割印は契約書に使用することが一般的であるため、古印体や篆書体などのように複製しにくい書体を用いるのがおすすめです。
また、印鑑のサイズが小さいと3部以上の契約書に割印を押す際、長さが足りなくなる場合があります。そのような事態に備えて、縦に長い割印専用の印鑑を用意しておくとよいでしょう。三者間以上の契約を結ぶことがある場合に便利です。割印に適した印鑑のサイズは3つです。
- 12×30mm
- 13.5×33mm
- 15×36mm
サイズによって入れられる文字数が異なるため、文字数によってはバランスが崩れてしまいます。したがって、バランスの良い印章を作成するためには、文字数と改行を考慮してサイズを選ぶようにしましょう。
20文字以上や、改行がいる法人名など、文字数が多い場合には「15×36mm」のサイズをおすすめします。
また、契約書の製本に使用するのは、「契印」です。
割印と異なり、契印に使用する印章は契約書に押印したものと同じでなければなりません。
割印を押し忘れた場合について
割印を押し忘れた場合、「契約は無効になる?」と不安に感じる方も多いでしょう。結論、契約は無効にはなりません。
契約書への押印を行っていれば、その契約自体は成立していることになります。したがって、割印が無いからといって契約書の法的効力が無くなるというわけではありません。
ただ、契約書を改ざんされた場合、割印がないとそれらの契約書が同一かどうか、関連があるかどうかの証明が難しくなるため、トラブルに発展するリスクがあります。これらのトラブルを防ぐ意味でも、割印の押し忘れには注意した方がよいでしょう。
割印や契印に失敗した場合について
割印・契印を失敗した際、ごまかしてはいけません。理由は、氏名・会社名が判読できなければ、印鑑を押している意味がなくなるからです。
そのため、失敗した場合は適切な対処を行う必要があります。割印や契印を失敗した際の方法は次の2通りです。
- 失敗した印影を二重線で取り消し、横に再度押印し直す
- 失敗した印影にもう1度印鑑を重ねて取り消し、横に再度押印し直す
ただし、二重線は誰でも書き足せるため、誰が訂正をしたのか判別がつきません。ビジネス書類や公的書類など実印を活用する場合は、間違えた印影にかぶせて捺印することが推奨されています。
また、修正テープ・修正液による修正はNGです。これらを使用して印鑑を訂正した場合、契約書が無効となってしまうため、注意しましょう。
割印や契印の訂正は1度までがマナーです。複数回訂正してしまうと、契約書自体の見栄えが悪くなり、相手に失礼な印象を与えかねません。複数回にわたって訂正する場合は、書面を印刷し直すことをおすすめします。
割印や契印をきれいに押すコツ
割印や契印をきれいに押すコツは次の3つです。
- 朱肉は均一につける
- 割印・契印を押す面の高さを均一にする
- 複数枚の場合はページを開き重ねる
朱肉は均一につける
印章を回しながら朱肉を均一につけることで、割印・契印の印影がかすれずにすみます。ただし、朱肉を付ける際は印鑑の重みだけでつけるようにしましょう。
力を入れて無理に朱肉をつけると、朱肉が印章に詰まる可能性があるからです。
割印・契印を押す面の高さを均一にする
割印がきれいに押せないのは、捺印面が凹凸となり、高さが揃っていないからです。したがって、割印を押す際は、捺印面の高さを合わせましょう。
印鑑マットを敷けば問題ありませんが、どうしても高さが合わないという場合は、厚紙などを下に敷くなどして調整するとよいでしょう。
複数枚の場合はページを開き重ねる
契約書に厚みがあると、割印をきれいに押すことができません。契約書が複数枚に及ぶ場合、1ページ目だけを開き重ねた状態にすると、きれいに割印を押せます。
割印や契印を省略できる「電子契約」
割印の概要や正しい押し方について解説いたしました。紙の契約書を作成し、割印・契印を行うのは時間と手間がかかるというデメリットがあります。また、押印に失敗した際、訂正方法を誤ると契約が無効となる事態にもなりかねません。
一方、電子契約であれば、製本や割印・契印などの手間は不要であり、訂正不備による契約無効化のリスクもありません。契約や割印の手間を省略したいのであれば、電子契約を使用するとよいでしょう。
なお「電子契約」に関する料金などの詳しい内容は次のページで解説しています。 ぜひこちらも参考にしてみてください。